造形教育センター岡山支部長

                      角田 みどり


 21世紀を迎え、戦後最大と言われる教育改革の波がうねりとなって押し寄せています。その中でも、子どもの「心の教育」を充実させることが重視され、子どもの情操や感性に働きかける体験活動が、学校教育の核となって展開されている昨今です。しかし、教育の不易の部分において、子どもの情操や感性をべ一スとした教育は、これまで美術教育や図画工作教育の分野がその中心的役割を果たしてきました。美術教育の歴史を振り返ると、昭和20年代から、美術や造形教育に関する民問の研究団体が次々と誕生し、海外の美術教育思想も盛んに紹介されるようになりました。「全造連」(昭和23年)や「創美」(昭和27年)などに次いで、ドイヅのバウハウスの構成教育の流れを汲み、デザイン・構成・色・形・視覚言語などの造形要素を中心として、系統立った指導のもとに造形感覚を育成することを目指した「造形教育センター」が、昭和30年に東京で創立されました。それまでの研究が児童画中心であったのに対して、造形教育センターは単に現場の教師だけでなく、幅広く造形の分野にわたる画家・デザイナー・評論家等と提携して、全領域で子どもの創造性を開発し、造形感覚の伸展を図ってきました。数多い民間の研究団体の中でも造形教育センターの活動は、戦後の日本における造形教育の理論と実践的研究に関して、革新的な功績を残したと言えます。
 この流れは地方都市にまで及び、岡山でも昭和45年に造形教育に熱き思いを寄せる青年教師たちが研究の場を求めて力を結集し、在野の団体として「造形教育センター岡山支部」を誕生させました。この年、新採用教員であった私は幸いにも好機を得て、造形ヤンターに入会させていただきました。
 爾来30年間、造形教育センター岡山支部は、東京本部から造形教育に関する最先端の情報を入手し、造形教育の分野で著名な講師を派遣していただくなど多くの恩典を受けながら、毎月第3土曜日を月例会として、その活動を継続してまいりました。月例会では、実践作品を前にしての熱心な討議、会員が講師となっての実技研修等が行われ、一時期は参加者が毎回50人を越えることもありました。毎年、中央と地方で交互に開催される「夏の研究大会」には、岡山支部から必ず研究発表者を送り、支部会員も多数参加して、本部や他支部会員の方々と交流を深めたことも懐かしい思い出です。
 この他にも、本部から講師をお招きして実施した「実技講習会」、市内デパートで開催した「岡山子供の造形展」など、ローカル都市岡山から造形教育研究を発信し続けた岡山支部の果たした役割は、決して小さくはないと自負しております。岡山支部のメンバーが、岡山市ならびに県下における造形教育を常にリードし、研究の大きな推進力となったと言っても過言ではないでしょう。
 研究団体の寿命は10年程度で、その役割は十分に果たせると言われます。しかし、造形教育センター岡山支部はその3倍も生き抜き、地元岡山に根付きました。月例会が途切れることなく30年間継続されたというのは、何よりもこの研究サークルに確かな魅力があったからでしょう。その魅力を分析してみると、第一は、本部からの「最新の造形教育情報」に裏付けられた支部会員の「質の高い実践研究」であり、第二には、「岡山ゆかりの恩師」ならぴに岡山支部の基盤を築かれた「諸先輩の温かいご指導」であり、第三には、忌悌のない意見を言い合える「会員の絆」であると思います。
 現在の岡山支部は、その隆盛期と比較して会員構成は縮小され、月例会の参加者は減少しました。このことは、現代の様々な教育研究団体がかかえる今日的な間題です。それだけに、残り続けた会員は、心底から造形教育を愛し、子どもの創造性を追求し続け、教育実践を語り合う場を求めている人たちばかりです。岡山支部は今後もその魅力を維持しつつ、「後継者の育成」という命題を解決しながら、着実で地道な活動を続けてまいりたいと考えております。


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